第一回
生き霊の正体は愛憎に苦しむ自分自身だった…!
自分の業の深さに悩み苦しむことになるのは、たいてい愛情深い女性です。相手を深く愛するがゆえに心を痛め、生き霊を発生させてしまうのです。この日に電話占い宝妙にお電話をくださったのも、そんな女性のひとりでした。
夜もだいぶ更けた頃、シンとした闇の中から、ある女性の不安げな波動が伝わってきました。その女性は、東京都渋谷区にお住まいの優子さん(仮名・31歳)です。波動から読みとった彼女は、モデルのようにスラリとした長身。堀の深い顔立ちも霊視ではっきりとわかりますが、その表情はひどく苦しげです。「間もなく優子さんからご相談のお電話が入ることになる」。そう思った矢先、目の前の電話が鳴りだしました。
「先生…。私、自分が怖いんです…」
優子さんのか細い第一声に、私はこう答えました。
「貴女は悪くありません。恋人を略奪されたら、誰だって相手の女性を憎むはず。むしろ憎まないほうがおかしいでしょう」
この言葉から、「この霊能者には、すべて見えている」と優子さんにお感じいただけたのでしょう。優子さんは張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、わっと泣きだしました。
「つい最近、一番の友人に彼を奪われましたね? そしてその友人を殺したいほど憎いと思っていますね?」
優子さんはそれには答えず泣いています。しかし、3人の間で繰り広げられた愛憎劇が映像となり、霊視した私の脳裏になだれ込んできました。優子さんのいないところで彼氏を誘惑していたT美さん。そして、その誘惑に負け、優子さんを裏切ってしまった優子さんの彼。もっとも信頼していた二人に裏切られたことで、優子さんのなかには強大な憎悪の念が渦巻きました。そしてその念は、凄まじいまでの威力を持った生き霊となってT美さんに襲いかかったのです。
優子さんの生き霊は、まず手始めにT美さんを駅の階段から突き落とし、全治2ヶ月のケガを負わせました。それから会社の重要な会議中に居眠りをさせたり、クライアントとの取引で重大なミスをさせたり…。とにかく、ありとあらゆる困難をT美さんに味あわせたのです。やることなすことうまくいかなくなったT美さんは、略奪した彼との関係も壊れつつあり、すっかり塞ぎ込んでしまいました。T美さんに起きている不幸の連鎖は彼女にとって自業自得ともいえるものですが、このようなことが続けば、生き霊を飛ばしている優子さんにも著しい悪影響が出ることになります。
優子さんには当初、T美さんの元へ生き霊を飛ばしたという自覚はありませんでした。しかし日を追うごとに、自分が生き霊を飛ばしているという確信を得たようです。優子さんは日中たびたび記憶を失うようになったのですが、その間の記憶がフラッシュバックのように頭のなかを駆け巡るのです。T美さんを突き飛ばしたときの手の感触、自分を見つめて恐怖に顔をゆがませているT美さんの顔…。それらを鮮明に想い出し、優子さんはとうとう自分の生き霊がしてきた事に気付いてしまいました。
「先生、私、生き霊を…」
優子さんは明らかに動揺し、その声は震えていました。
「わかっていますよ。生き霊を飛ばしてしまったんでしょう?」
私は彼女にやさしく語りかけ、こう諭しました。
「あの二人のことは、もう貴女から手放しましょう。間もなく貴女には、人生で最高の出逢いが訪れることになります。今回の別れは、その出逢いを迎えるための必然的別れだったのです」
優子さんは私の予知に静かに耳を傾け、力強く頷きました。彼女の意識が変わることで、分身である生き霊にも変化が生じたのでしょう。先ほどよりも、生き霊の力が弱まっているのを感じました。生き霊はずしにはもってこいのチャンスだと感じた私は、霊能力を最高潮にまで高め、生き霊を浄化。すばやく、優子さんの体に戻したのです。その途端、つい今しがたまで生気の感じられなかった優子さんから、力強い波動をキャッチすることができるようになったのです。
「私、もう二人に執着するのをやめることにします。自信を持って次の一歩を踏み出したいから」
そう宣言した優子さんの瞳はまっすぐに前を向いていて、とても澄んでいました。この先、優子さんが生き霊を飛ばしてしまうことはないでしょう。将来の旦那様と微笑む未来の優子さんの姿が、私にははっきりと霊視できました。